静岡県自慢のわさび:最近の研究で分かったその健康効果とは?

わさびは日本原産の植物です。その歴史は古く、平安時代中期に編纂された日本最古の薬草辞典「本草和名」にも「和佐比」として登場しているほど、古来、薬草として珍重されてきました。そして静岡県産のわさびのシェア(産出額ベース)は全国の約7割と、静岡県は全国に誇るわさびの産地。今から約400年前、現在の静岡市葵区の山間部にある有東木地区で、谷川に自生するわさびを採集し、栽培を開始したのがその先駆けと言われています。ここでは辛味の味わいにとどまらない、わさびの持つ健康効果や意外な使い方についてお伝えしましょう。
●健康効果に関するわさびの基礎知識
1. 機能成分
わさびの機能成分は「アリルからし油」と言い、さまざまな効果があることが知られています。一例を挙げると「発がん抑制」、「抗菌作用」、「抗カビ作用」、「酸化防止」、「ビタミンB1の合成促進」などです。わさびをすりおろす時に細胞が破壊され、「シニグリン」という辛味成分が「ミロシナーゼ」という酵素によって分解されます。すりおろすことで、揮発性の「アリルからし油」が生まれ、鼻に抜けるツンとした辛味を感じるのです。「アリルからし油」は揮発性の成分なので、時間が経つと辛味は減少していきます。一つ注意したいのは、有効成分は本わさびに含まれており、チューブなどの原料である西洋わさびには含まれていません。(成分出典/静岡県立大学 食品衛生学研究室 『S-mail 35 テーマ/わさび』JA静岡経済連)

2. わさびの持つ健康効果とは?
わさびに含まれる「イソチオシアネート」は、抗酸化作用を持ち、細胞の老化を防ぐ働きをすると言われています。日常生活に取り入れることで、体内の活性酸素を抑える助けとなります。
a. 食欲増進効果
わさびは爽やかな辛味が唾液分泌を促し、目にも鮮やかなおろし立てのみどり色がさらに食欲をそそります。また「βアミラーゼ」というでんぷんを分解する強力な酵素が消化吸収を助けるため、胃がすっきりとし、食事をおいしくいただくことができます。魚のくさみも消すため、刺身の薬味として添えられてきた歴史があります。
b. 抗酸化作用
近年では、わさびの持つ抗酸化作用にも注目が集まっています。わさびの根茎に含まれる成分「ヘキサラファン」は、活性酸素の発生を抑制する作用があります。これはどういうことかというと、体内の細胞がダメージを受けにくいということ。「ヘキサラファンを一度摂取すると、24時間はその効果が持続します」(引用元:『わさびで脳が元気になる』奥西 勲・著/主婦の友社 2023年4月30日発行)とあるように、身体の中の細胞が傷つきにくい、抗酸化作用が一定時間、持続します。
c. 認知機能の向上
東北大学加齢医学研究所の研究で、高齢者の記憶機能が改善された例も紹介されています。「ヘキサラファン」を12週間投与されたグループは、エピソード記憶と作業記憶の両方において、記憶力向上が見られたそうです。脳の神経細胞は、一度傷つくと再生が難しいと言われていますが、そんな中、活性酸素抑制に役立ち、言わば細胞を守る働きをするわさびの「ヘキサラファン」は、非常に頼りになる存在。新型コロナ肺炎の流行以降、話題に上るブレインフォグへの良い影響も指摘されています。青魚と共に摂取すると魚のDHAとの相乗効果もあるとのこと。わさびと刺身や鮨との深い縁には理由があったのですね。
d. 血栓症を予防する効果
動脈硬化や心筋梗塞など、血栓によって引き起こされる生活習慣病は数多くありますが、わさびには血流の改善効果もあります。「わさび独特の『沢の香り』の主成分(西洋わさび、粉わさびには存在しない成分)による効果で、血液中の血小板の凝集を抑制し、血液凝固を防ぐ」と言われており、血液をサラサラにしてくれます。
e. ガンを予防および抑制する効果
「ヘキサラファン」の効果は持続性が高く、肝臓の解毒代謝酵素の活性を高めます。肝臓の解毒代謝酵素とは、発がん性のある物質などヒトに対する有害物質を無毒化し、体外に排出する働きを担っています。つまり、わさびの摂取により発がん予防効果も期待できそうです。
f. その他「アレルギー症状の緩和」や「酸化ストレス軽減作用」も
ヘキサラファンの抗炎症作用には、花粉症や軽度アトピー性皮膚炎など、アレルギー症状の緩和にも効果があるという実験結果もあります。一定の酸化ストレス軽減作用も認められており、さらなる実験や研究の成果が気になるところです。